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先進医療ってなに?現役外科医が解説します!

こんにちは、ちょこパパです

みなさん、先進医療とは何か知ってますか?

先進医療とは、法律上は

「厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養」

と定義されています

全然わからん!!!

だよね。医者でも分かってない人って多いんだよ。

そんなん分かるわけないやろ~

ということで、今回は、先進医療について分かりやすく解説します

もくじ

先進医療とは

先進医療って、なんか凄い効く治療ってことじゃないの?

よくある勘違いだね。
先進医療は治療効果の強弱で決められているわけじゃないんだ。

先進医療とは、簡単に言うと、

たぶん効果はあるし、

たぶん安全だけど、

まだ判断がついていなかったり

技術的に難しかったり

場所が限られていたりして、

保険診療になってない医療行為のことを言います

つまり、普通の治療(保険診療)に比べて必ずしも治療効果が高いってわけじゃないんです

多くの人がかかる病気で、今ある治療方法に比べて明らかに優れている治療方法は基本的には保険診療になります

だから、先進医療に一生関わらない医者って多いんだよ

保険診療になるってどういうこと?

医療行為には大きく分けて3つあるんです

  1. 自由診療…効果は分からないけど、やりたいならやっても良い医療行為
  2. 先進医療…効果はありそうだけど、保険診療になってない医療行為
  3. 保険診療…普段受けている、安全で効果があると分かっている医療行為

医療費は

  1. 自由診療…全額自己負担
  2. 先進医療…先進医療分は自己負担(入院費などは多くの人は3割負担)
  3. 保険診療…多くの人は3割負担

新しい検査や治療の臨床試験で、安全で今までの検査・治療よりも効果的なものは、

基本的には保険診療に登録されます

ただ、安全性や有効性を明らかにするには多くの人・時間・場所が必要になります

なので、保険診療に登録される前の医療行為は、

有効性実施できる技術・場所を考慮されて、先進医療に登録されるものもあります

先進医療や保険診療に登録される前の治療は自由診療で受けることになります

先進医療から変更されたもの

今まで先進医療から保険診療になったものってどんなものがあるの?

たくさんあるんだけど、最近変更されたものを具体的に見てみよう!

1.腹腔鏡下広範子宮全摘術

これは、子宮頸癌に対する手術です。

2017年度には先進医療のうち4番目に多く行われていた治療でした。

多く行われたことで、安全性と有効性が示されたので、2018年から保険診療に変更されました。

今は、代わりにロボットによる広範子宮全摘術が先進医療になってます。

2.多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術

白内障に対する治療です。

2019年度の先進医療でもっとも行われていましたが、2020年4月から選定療養に変更されました。

選定療養っていうのは、自費だけど希望すれば保険診療に追加できるもののことだよ。例えば個室代とかもその1つだね。

2021年1月現在の主な先進医療

2020年12月時点で先進医療は82種類あります。

ひぇ~、そんなにあるの!?

でもね、そのうち23種類は1年間全く実施されてないんだ!
しかも、僕から見ると、
これって意味ないんだろうなって思うものもあるんだよ。
実際、有効性が示せずに先進医療から削除されちゃうものもあるんだ!

厚生労働省の先進医療会議の資料によると、

令和元年7月から令和2年6月の1年間で

5459件の先進医療が実施されました。

そのうち、約70%を占めているのが以下の5つの先進医療になります。

陽子線とか重粒子線って凄い治療って聞いたことある!

新しい治療だし、凄いっちゃ凄いんだけど、
何が凄いか分かる?

めっちゃ効く治療ってことじゃないの?

それはよくある勘違いなんだ。

重粒子線と陽子線

重粒子線と陽子線の違いは粒子の大きさです

放射線には2つあります。

  • 電磁放射線…通常の放射線治療などに使われるX線やγ線
  • 粒子放射線…陽子線や重粒子線のように高速で動く粒子

重粒子線や陽子線の特徴

  • 通常の放射線治療よりも周囲組織の被爆が少ないので、そこに別の癌ができる可能性は低いと言われています
  • 治療効果は放射線治療と同等
  • 治療期間は放射線よりも少ない

2021年1月現在、

重粒子線と陽子線の保険適応は、

  • 小児癌(陽子線のみ)
  • 前立腺癌
  • 頭頸部悪性腫瘍
  • 骨軟部腫瘍

となっており、これらは高額療養費制度を適応できるので、比較的治療を受けやすくなりました

現在も重粒子線と陽子線の臨床試験は進行中であり、今後も保険適応は拡大していくと思います

ただし、重粒子線や陽子線治療には巨大な装置が必要であり、全国でも限られた施設でしか治療を受けることができません

個人的な意見としては、
・今は通常の放射線治療も進歩している
・癌は基本的には高齢者の病気である
・早期の癌のほとんどは手術の方が治る
ってことで、小児癌以外は必ずしも陽子線や重粒子線の必要はないんじゃないかなって思ってます

まとめ

先進医療とは、

治療の効果や安全性が不確定だったり、技術的・場所的に保険診療となっていない医療行為です

基本的に普通の人がかかるような病気に対しては

保険診療で対応できるものがほとんどです

先進医療という名称が良くないですよね

先進医療については過度の期待は禁物です

それを踏まえて、

医療行為の選択や保険について考えましょう

2021年1月14日 投稿

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